DESIGNERデザイナー

TOMO TAMURA

日本の「四季」。これは私にとってファッションの原点です。

一年間でこんなにも沢山の景色を変えてくれる。またその季節の変わり目で、可憐な花々がそっと肩をノックする。草木が揺れ、強い生命力の大合唱。頬を優しく撫でる風は、自然を見事なグラデーションに染め上げる。そして静かに灯りがともり、原点を教えてくれる純白の雪化粧。

私たちは生まれながらにして、日々変化していく日本特有の繊細な“美”と日常的に触れています。そしてその‟日本の美“を身に纏うものにも表現し、四季折々に合わせて変化させてきました。かつて日本女性が着物を着る際に、当たり前のように四季が織り成す「情景」に合わせて柄や色を選んだこと。小物使いひとつにとっても、その「とき」を感じるモチーフや素材を取り入れアクセントにしたこと。そうした情緒的な「意味」をもつファッションで自己表現することに「格好良さ」を感じることが、現代の日本のファッションには希薄になってきているように思います。

私たちが潜在的に備えている「日本的感性」の価値を再認識していき、ものづくりを通し、「日本らしいファッション」を、「日本だからこそのファッション」を、目には見えない「ジャパンセンス」を、探り追求していくことが、我々SHISENDO TOMO COLLECTION(シセンドウ トモ コレクション)の本質的な創作テーマです。

[デザインについて]

私たちは、「二越ちりめん」という日本を代表する織物で服作りをおこなっています。「ちりめん」を選んだ理由はただひとつ。女性ひとりひとりの美を表現できる生地だからです。身長や体型は千差万別それぞれ違います。ちりめんは着ることで、その人ひとりひとりの身体の形を作ってくれます。フィットするのではなく、ラインに沿って落ちていく感じ、時にはドレープをきかせて、時には直線的に。

デザインする上では、自然に逆らわず、重力や風を味方にして考えています。

 

[柄について]

私の頭の中には、この世に実在しない情景が沢山あります。ノスタルジックなものから、近代的なもの、何でもない日常的なもの。そしてそこには音楽も流れていて、アーティストも曲名も知らないけれど、頭の中の情景をより深く濃く鮮明にしてくれるメロディ。決して実在する場所ではなく、瞬間的に遭遇するデジャヴに近いもの。

私はその場所に行きたくて‥行けなくて。せめて記憶に残したくて、景色をつかみ取って図案をつくる。だから柄ひとつひとつに名前とストーリーを残しています。